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いち音楽ファンとして、そしてWEBの業界に身を置いているエンジニアのひとりとして、感じたままを書きまとめたいと思います。

具体的な内容はOAS運営者のページを参照してください。
その中ではOASは「ビジネスモデル」と謳っていますが、これはまだ単なる理念でしょう。
ストレートに言えば、音楽でメシを食いたいと願ってる人の願望です。
いまのままでは多少の賛同が得られても、成功することも実績を生むこともないでしょう。

1. メルマガ?

・ステップ1
メールマガジン配信システムを利用し、無料のメールマガジンを発行します。
定期的にあなたのライブ活動や制作活動などについて告知を行います。

ひたすらその無料メールマガジンをライブ会場やホームページ・mixi・twitter等で宣伝し続け、読者数を伸ばす努力を続けます。

引用:オープンド・アーティスト・システムとは?

メルマガの会員を増やすのは難しくないかもしれません。
しかし、会員の多くをアクティブユーザであり続けさせるのは極めて難しいです。
メルマガ内のURLがクリックされる(メルマガからのリアクションが得られる)のは10%あれば上々でしょう。
メルマガの会員を増やす本当の目的は、母数を増やすことでアクティブユーザの数を増やすこと、これだけです。
さらに、無償のメルマガから有償のプレミアム会員やライブへの誘導はアクティブユーザの数%程度が限界です。
経験上、10000人のメルマガ会員がいてもプレミアム会員になるのは100人に満たないでしょう。
この時点で、このOASというシステムの根底が理想論に思えてしまうんです。

2. 楽曲配信?

そのメールマガジン上にて、定期的に新曲を無料配布します。
(しっかりとレコーディング・ミックスしたものを、1ヶ月~3ヶ月に1曲くらいのペースで)

引用:オープンド・アーティスト・システムとは?

メルマガに無料で音楽が付いてくるのも具体性が見えません。
MP3を添付できるメルマガなんてあるんでしょうか?
あったとして、数MBのファイルを添付して送信することを是とするのでしょうか?
配信サイトを利用して楽曲を無料提供する場合、そのコストはどうなるのでしょうか?
1曲4MBだとして、これが10人とか100人の規模ならまだ簡単ですよ。
1000人とかの規模になったらどうなるんでしょう。
トラフィックは32Gbとかですよ。
そして1アーティストが10000人規模のメルマガ配信できるようになって、はじめてそれなりの金銭的利益を生むシステムなわけですよ。
OAS全体として、運営コストについて理解が薄いと感じます。

3. 有償化?

無料化してしまうことによって、違法コピーももはや意味を持たなくなります。

新曲が出る度に、友人にコピーして送ってもらうよりも、YouTubeで検索するよりも、あなたのメールマガジンに登録してしまう方が楽ですから。

さらに「過去に配信されたバックナンバーの楽曲は、有料ダウンロード販売になる」とすることによって、「登録するなら早めに登録してしまった方が得」と意識させる事も可能です。

引用:オープンド・アーティスト・システムとは?

将来的には過去配信の楽曲を有償化とあります。
有償であれば、当然のように現状同様に違法コピーも現れます。
そうした行為からアーティストを保護する方法はどうするのでしょう。
ライブやグッズ販売で利益を得たいのであれば、むしろすべての楽曲を無償で公開したほうが低コスト。
どうせ無料ならMySpaceやYouTubeで流したほうがアーティストもリスナーも簡単です。
トラフィックのコスト負担も生じません。
諸々考えても、わざわざ配信の手順を経る価値が見えません。
そもそもメルマガというのは熱しやすく冷めやすい方法です。
メルマガって登録してるけど読んでない人がほとんどですよね。

4. 結局ビジネスモデルって?

当面は、無料メルマガ読者数1000人~2000人を目指します。
その頃には、あなたのライブの動員数も伸びてきていることでしょう。
つまり、ライブやグッズ販売を行うことで収益を得ることが出来てきているでしょう。

月額制のファンクラブのようなものを開設します。
会費は月額500円~900円程度のイメージです。
これは、従来のファンクラブに比べると少しだけ割高ですが、その分特典を多く付けます。
OASでは、この「ファンクラブのようなものの会員」の事を「プレミアム・サポーター」と呼ぶ事にします。

あなたの「プレミアム・サポーター」が増加していくにつれて、あなたは安定感のある「月収」を得られることになります。
そしてそれだけではなく、ライブでの収益やグッズ販売での収益もさらに伸びている事でしょう。

引用:オープンド・アーティスト・システムとは?

WEBは無償の場ではありません。
エンドユーザにとっては無償でも、配給側はコストを負って別の形で利益を得ています。
それぞれの立場にそれぞれの価値があり、そこに利益が循環するからこそのビジネスモデルです。

プレミアム会員が年額6000円として1000人ついても600万円。
その600万円の中でメルマガを運営や楽曲を配信する等のOAS運営費を差し引いたら、アーティストが得る利益はいかほどでしょうか。
スタジオを借りて練習し、日々人並みに生活することができるほどの利益を生めるのでしょうか。
1000人規模の無料ライブを開き、CDやDVDを配送することが本当に可能なんでしょうか。

OASは「中間マージンを削る」システムではなく、「中間マージンを掻っ攫う」システムです。
今、中間マージンで利益を得ている人から利益を奪って、自身とアーティストで分配するシステムです。
もちろんこれは悪いことじゃないです。
しかしアーティストが得る利益は金銭的なものだけなんでしょうか?
そこは知らない世界ですが、ライブの手配や告知、メディアへの売り込みなど相応のバックアップを得ているでしょうし、そこには相応のコストが発生しているはずです。

5. ボクはこう思う
いま、ライブに行く・CDを買うなど物理的な音楽にお金を払うのは音楽ファンだけです。
媒体が変化し、集金システムが変化した今、アーティストに必要なのは既存のビジネスフロー以外からの金銭的な利益でしょう。
ビジネスモデルの変革は、業界がある程度潤って余裕がなければできません。
自分を守るのに精一杯なんだから、邪魔なものには容赦なくなります。
だってビジネスなんだから。
ならば、今のビジネスモデルが幹だとしたら、OASはそこから伸びる枝になるべきです。
力強く伸びて幹も他の枝にも栄養をたくさん届ければ、全体が大きく育つはず。
枝の先にインディペンデントの花が咲いて実と成り、また新たな木へと育つかもしれません。

でも、最近の音楽って「本当に音楽が好きで作ってるの?」と、疑いたくなるようなものばかりでツマラナイってのが正直な感想。
名曲は音楽を好きでしょうがない人からしか生まれないと思う。
ボクは音楽が好きです。
だから、同じく音楽が好きな3人が考えたOASの今後も気になるし、もし失敗したとしても、この理念に触発された人がこれからどんどん増えて、そうした人の音楽が世の中に溢れたら楽しいだろうなと思っています。


オープンド・アーティスト・システムという理念

UPDATE: 2011.01.07
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